ルビッチの誘惑

<映画>

a)極楽特急エルンスト・ルビッチ
b)天使(エルンスト・ルビッチ
ビデオ

何度も言うがリリアン・ギッシュを見逃したのでルビッチを見る。
ルビッチが映画作家であるのは、観客に対しての礼儀をわきまえているからである。いわゆるルビッチタッチと評されるものだが、それは例えば、わざわざ画面に映し出さなくても観客には十分に理解されている美しくない部分を省略し、そして一見おもしろおかしく、そして美しく見せてしまうからだ。たとえば『天使』の中での省略、パリの公園でスミレを買っている間に消えるディートリッヒを男はその地位も鑑みず恥を捨て本気で探す、その美しいとは言い難い姿を決してルビッチは画面に映そうとしない。そしてそのかわり、花を売る身分が低い老婆の浅ましい行動をキャメラで捉える。我々観客は、地位の高い男の情けない姿を見て嫌な気持ちを覚える代わりに、自分より低い身分の老婆の姿を笑うばかりである。これはもちろん、同じく『天使』の中の食事のシーンの省略(私たちは食事中の三人の姿を決してみることなく、厨房の中のやりとりを見て、笑いと共に全てを想像する)や、『極楽特急』の中でのハーバート・マーシャルケイ・フランシスが隠れて愛を交わしている姿を決して映さず、外側からもうひとりの秘書の目で捉えるだけである。その内部で起こっていることを我々は全て頭に想像することが出来るからこそ、映さないという気品あふれた映画作家である。世間を騒がしている芸大映画であるが、どうしてあんな品が無い映画を作れるのだろうか、ルビッチを見て勉強すべきだろう、と僕は思うばかりである。てゆうか単純に最強に面白いのだからね!
そして『天使』のラストシーンを見て、映画を見る喜びを越えるものはないのだ、とまた僕は思わせられてしまう。あードイツ映画祭が楽しみだなあ。てかチケットまだあるのだろうか。必見ですよ!僕は昨年、その値段にびびって行かなかったことをいまだに後悔しております。ルビッチは6月10、11日に上映。筒井武文が「天国に行ったような面白さ」という『花嫁人形』、ストーリー読むとほんとにおもしろそうすぎ!!(ドイツ映画祭2007公式http://www.asahi.com/event/de07/index.html