Can we meet ?

2時過ぎに目を覚まし、なんかもう無敵なんじゃねーかなと思う。
飯を食いに外に出ようと思い、いったん休憩のため食堂に座っていると、突然スコールが降り出す。雨はいったんやんだそぶりを見せるが、確認のため席から立ちたった3歩くらいの距離を移動するのがひたすらめんどくさい。もう廃人すれすれの状態だ。とゆうか18時をすぎないとパワーが出ない。死ねばいいと思う。
とりあえずなんとか昼飯を食い、昼間の唯一の生きる理由である彼女からのメールを確認しにネットカフェへ。
メールボックスを今までにないくらいドキドキして開く。
が、彼女からのメールはない。
理由はわからない。俺の送ったメールが悪かったか。何度も自分の恥ずかしいメールを確認し、その度に赤面しを繰り返す。とりあえず気持ちを誤魔化すためにブログをひたすら更新。
諦めよう。諦めてカンボジアに行こう。
そう思ったそのとき、彼女からのメールは届いた。
「I have free time at this night after working.」
そしてCan we meet?の文字。

とにかく自分が何をしていいのかわけわからなくなってしまい、メールを返信もせずに宿へ帰る。ひたすら現実逃避をして、まず歯磨きをしシャワーを浴びて、そろそろ現実逃避できなくなってきた時間なことを確認してネットカフェへ向かう。
彼女へのメールを返信して、そのメールに書いてあった携帯の番号へ勇気を振り絞って電話をかける。
しかし、受話器から聞こえてきた声はJoyの声ではなかった。
受話器からはたどたどしい日本語。Joyは日本語どころか、英語すらほとんど喋れない。こんにちはとたどたどしくいう女の子はJoyではなかった。Beeである。
とにかく頭の中がパニックになる。
ぼくはBeeに問う。ひたすら日本語で。
「これはJoyの携帯番号じゃないの?」
「いまJoyと一緒にいるの?」
もしかしてぼくはあの恥ずかしいメールをBeeに送ってしまったのではないかという考えすら頭をよぎって狂いそうになる。
もちろんBeeはそんな難しい日本語わかるわけなく、俺が質問攻めしている間に入れた金はすぐに切れた。ツーツーという音で自分の頭を整理しようとする。残っているのは5バーツコインのみ。
いま一番知りたいことは何だ。それだけを考え、僕は5バーツコインを公衆電話に入れた。聞こえてくるのはやはりBeeの声。でも今度は僕は落ち着いている。一番知りたいこと。決まっている。
「ぼくはもう一度Joyと会いたいんだ。今夜彼女と会えるのか?」
彼女は、今夜ではなく明日の夜ならJoyは会えると言った。this nightはtomorrowの意味だ、と。それだけ確認するとサンキューと言い電話を切った。
とにかくJoyに会える。
それだけで十分。他に何がいるか。
それだけでこのわけのわからない事態なんてどうでもよくなった。僕はもう1度彼女にメールを打ちにネットカフェへ。これがBeeの番号であること、もう1度明日会えることを確認するメールを打つ。

それを終えると、一気に楽になる。とりあえず宿に戻り、相方に事情を説明し、飯を食いに外に出る。
途中食堂でオケと今夜ライブハウスに行く約束をしていたので、時間が来次第また夜のカオサンへと繰り出す。
すっかり常連になったライブハウスで、スタッフと話しながら席に着く。日本人客はほぼいないので、スタッフのみんなは僕の顔を覚えていてくれる。席に着くと、大声でぼくの名前を呼ぶ声が聞こえる。振り返ると、そこにはとてもよく見知った顔。そしてもう1度会いたかった人。
こうたさんだ。ぼくらは大声で再会を喜ぶ。こうたさんの彼女とも挨拶をし、3人で席についてひたすら語る。
「そういえば11日なのにここにいるってことは。」
こうたさんはそう繰り出す。そして僕の胸を殴る。ぼくは人生の先輩にJoyのことを相談する。
Joyとは明日会えることになったこと。でもJoyの気持ちがわからないということ。彼女は携帯の番号を自分のではなくBeeのを教えてきたということ。ということは明日会うといってもふたりでは会えないだろうということ。
こうたさんは笑って、女の気持ちなんてわかるわけねーじゃんと言った。
「だから今そんなに気持ちがワクワクしてドキドキしてんだべ?」
と。やっぱすげーなこの人はと改めて思う。ほんとうにこの人と会えてよかった。
こうたさんはただJoyは英語ができないから、Beeの携帯を教えたんだよ、と付け足す。彼女もつらかったんだろうって。
相方とオケ君はこのあたりでゴーゴーへ。僕とこうたさん、こうたさんの彼女はいつものクラブへ繰り出す。3人で適当に踊っていると、なんとNoiが現れる。
Noiをいじってひたすら遊んでいると、こうたさんたちが帰るという。本当に最後の別れ。
ぼくとこうたさんはまたお互いをきつく抱きしめ、どちらともなく自然とこう言った。
「じゃあ、また、世界のどこかで」
「インドあたりで」
なんて、バックパッカーの挨拶。この人ほどもう1度会いたいと思った人は今までいない。本当にありがとうございます。
彼と別れた後、ぼくは適当にNoiと体を合わせて踊る。しばらく踊りトイレへ向かう。トイレから出ると、タイ人の男2人に挑発されたので、一緒にむちゃくちゃ激しく踊る。するとむこうも俺を認めてくれたのか、テキーラを勧めてくれる。ショットを一気に飲み干すと、またテキーラを注ぐ。結局5ショットくらい連続で行き、頭も体もふらふらになりながら踊る。
だんだん自分が自分じゃないみたいになってしまい、立てなくなりトイレの前の椅子に座り込む。そんな僕をみんなが心配して介抱してくれる。こんなところがタイ人大好き。みんないいやつばっかだ。
特に一生懸命介抱してくれたのが、タイ人のかわいらしい女の子なんだが、けっこう話しをし、仲良くなった。名前を聞くと、彼女はJoyだと名乗る。なんだか酔いは一気に醒める。早くJoyに会いたい。
ぼくはふらふらしながらもなんとかホテルに戻り、ベッドに横になった。
全く眠れない。Joyと会えない夜はとにかく長い。