東京からちょっと離れて

さて、と決意して明るみ始めた空の下を、貰った煙草をくわえながら歩く。
振り向き、道端ではしゃぐ彼らに、「いってきます」と言っても反応はなし。もうちょっと見送る気見せろよ、と笑う。まあこうして送別してくれる友人がいることはありがたいこと。


東京から中国なんてあっという間。
餞別で貰ったカフカの『アメリカ』をちょっと開いて、隣の中国人の女の子たちと遊んで、ひとつ目でもつぶってみれば、もうそこは北京。
とりあえず市内までの交通費を両替しようとすると、空港の両替所ではどこも40元がコミッションでかかるという。40元といえば600円も!予算12万円分の600円。ふざけんな!ということで「タクシー?」と聞いてくる運ちゃんを裏に呼び出し交渉開始。両替所が混んでるからとか適当なことを言いつつ、コミッションなしで両替してもらおうとする。

そんなことをやりつつ、北京駅までのバスに乗り込み、降りる。
車の、市場の、喧騒喧騒。ぐわーって何かが混み上がってくる。久しぶりのこの旅の感触に体が震えて、顔が自然とにやけてくる。やばい楽しい。へらへらと気持ち悪い感じでうろうろ。事前情報通り、英語はほとんど通じない。そのほうが燃える。

歩き方に載っていたユースホステルに着くとドミトリーはいっぱいだと言う。
疲れてるしシングルに泊まっちゃおうかな、と思うが、ユースに入ってから一気にあの興奮が冷めてしまった自分がいることに気づく。
受付は自由自在に英語を操る女性。ロビーにはたむろする大勢のファラン

少し考え、やっぱいいや、とユースをあとにする。出たときに声をかけてきた気のよさそうなおばちゃんが100元でシングルというので、80なら泊まるよ、というとあっさり下がる。おばちゃんの笑顔にやられ、ついてくことにする。
着いたところは予想通り幽霊屋敷。泊まってる客全員中国人だし、受付の女の子も英語なんてもちろん通じない。また楽しくなる!どうやらマゾだ!

部屋に入ってぐっすり寝る。1週間ぐらいほとんど寝てなかった疲れ、一気に回復。夜の10時くらいに腹が減ったので外に出ようとすると、突然のスコール。

走って宿に戻ると大笑いされ、バスタオルを貸してくれる。宿の姉ちゃんからもらったアイスをくわえ、バスタオルを頭に巻き、やっぱよかったと実感。
さあ旅は始まったばかりだ。